出生前診断とは、主に出生前にお母さんの血液や羊水などを検査し、赤ちゃんに生まれつきの疾患があるかどうか、その可能性について調べる検査のことです。

その検査で染色体異常と診断され、流産になる方もおられます。

それでは、出生前診断とは何か、染色体異常とは何かを簡単に説明していきます。

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出生前診断とは

産婦人科の外来で、特に高齢出産の方から1番多い相談が、出生前診断の検査に関わるものだそうです。

出生前診断とは、出生前にお母さんの血液や羊水などを検査して、赤ちゃんに生まれつきの疾患があるか、その可能性について調べる検査のことです。

赤ちゃんの形態を細かく観察する胎児エコーも広い意味では出生前検査の1つでしょう。最近では、特に染色体異常について調べる技術が発達し、検査を希望する夫婦も増えてきました。

検査を受けることによって、お腹の赤ちゃんが病気を持つ可能性が分かる半面、それが分かったときに夫婦がどのように対応するのかといった難しい問題もあります。

産婦人科の外来では、赤ちゃんの染色体異常について、また現在行われてる検査について説明されます。 1回の外来相談は産婦人科にもよりますが、おおむね30分ほどで行われる場合が多いようです。

30分ほどでは十分にお母さんからの質問に答え切れないことも少なくありません。専門医の方も常に新しい情報について勉強し理解し、正確な情報を提供していくこと心がけておられると思います。

常に中立な立場で、情報提供を行い、外来に来られた夫婦とで意思決定ができるようにサポートされています。

高齢①

出生前診断とは、赤ちゃんに生まれつきの疾患があるかどうかを検査することです。

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納得して出生前診断を決めることが大切

出生前診断を受けるかどうかを選択するのは、最終的には夫婦です。

検査でわかることと、わからないことがあり、検査を受けることによるメリットとデメリットなどを十分に理解し、「2人で納得して選択する」ことが重要です。検査をするという選択もあるでしょうし、検査を受けないという選択もあります。

特に「高齢出産だから検査を受けなければいけない」と感じている方や、「高齢出産だから周りの家族や親から検査を受けるように強く勧められた」という方がたくさんおられるようです。

母親の年齢が高くなる(高齢出産になる)と、染色体異常の確率が高くなるといわれれば、誰もが心配な気持ちになるでしょう。そして元気な赤ちゃんが産まれますように、と願うのは親として当たり前の気持ちだと思います。

しかし出生前診断には、それぞれの検査の限界や問題点もあります。安心のためと軽い気持ちで受けられても、思わぬ結果で不安になることもあります。また当初想定していなかった選択に悩まざるを得ない状況になる場合もあります。

最終的にお腹の赤ちゃんに病気があることが分かっても、根本的な治療ができないこともあります。障害があっても産み育てていくのか、あるいは中絶手術を選択するのかという問題を2人で考えていかなくてはならない場合もあります。

ですので、誰かから勧められたり、誰かに勧めたりする検査では決してありません。高齢出産だから念のために受ける、あるいは他人が受けているから自分も受けるものではなく、夫婦でよく時間をかけて考えて決める必要があります。

高齢①

出生前診断を受けるか否かは、夫婦で納得して選択してください。

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先天性異常の種類

赤ちゃんが無事に生まれてきた場合にも、何らかの生まれつきの病気が見つかることがあります。それらを総称して「先天性異常」と呼びます。

先天性異常の種類には、下記の症状があります。

  • 心臓や消化器、腎臓などの内臓の疾患
  • 口蓋裂(こうがいれつ)・口唇裂
  • 外表奇形
  • 聴力・視力の障害



これらは、種類も症状も様々ですが、新生児全体の3%から4%に先天性異常が見られます。

原因としては、染色体異常によるものが約25%、遺伝子の疾患によるものが約20%、多因子によるものが約50%、環境や催奇形因子(アルコール・タバコ・放射線など)によるものが約5%となっています。

お母さんの年齢が高くなると、つまり高齢出産になればなるほど、相対的にお子さんが染色体異常を持つ可能性が高くなります。しかしどの年齢のお母さんにとっても、お子さんが生まれつき病気を持つ可能性はあります。

高齢①

生まれつきの病気である先天性異常は、高齢出産になればなるほど可能性が高くなります。

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染色体異常について

次に染色体の仕組みについて、説明していきます。自然流産は、どのくらいの頻度で起きているのでしょうか?

実は全体の妊娠の約15%、つまり6日に1人ぐらいの頻度で起きています。さらに高齢出産になると、30歳代後半では約20%、40歳以上では約40%と流産のリスクが上昇していきます。

この自然流産の約7割の原因とされるのが、「染色体異常」です。染色体という言葉は、なかなか聞き慣れない言葉です。

染色体はDNAと呼ばれる遺伝情報を持つ物質とタンパク質が、何段階にも複雑にたたき込まれたものです。

1本の染色体には、たくさんの遺伝子が存在します。そしてその遺伝子は、生物が生きていく上での重要な体の設計図にもたとえることができます。 1つの細胞には、父親由来の23本と、母親由来の23本の総数46本の染色体が存在します。

染色体の対応する位置に遺伝子がペアで存在して、機能を果たしています。卵子と精子は特殊な細胞で、元の細胞から染色体が半分に分かれ、23本の染色体数になっています。

23本の染色体を持つ精子と23本の染色体を持つ卵子が受精すると、そこで再び46本の染色体を持つ受精卵となります。

この染色体の組み合わせがうまくいかないのが、染色体異常です。

染色体異常の場合、多くは流産となってしまいます。流産のリスクが増えるということです。染色体異常としては、21番の染色体が3本ある21トリソミー(ダウン症候群)が最も頻度が高く、そのほかに18トリソミー、13トリソミーがあります。

これら3種類のトリソミーは、「染色体不分離」が原因で発症します。染色体不分離とは、元となる細胞から染色体が正確に半数ずつに分かれていないことをいいます。

これは高齢出産になるとともに、卵子が作られる過程での不分離の発症率が高くなります。

その結果、24本の染色体を持つ卵子からトリソミーの受精卵が作られます。例えば、40歳の高齢出産の母親からダウン症候群のお子様が生まれる確率は、約1%です。

精子の染色体不分離は起こりにくく、父親の年齢による影響も受けません。また体外受精による妊娠の場合でも、これらのトリソミーが発症する確率は変わりません。

高齢①

染色体異常の場合は、流産のリスクが増えます。特に高齢出産の場合は、流産のリスクがさらに上昇します。