高齢出産を控えた方が、妊娠期に「元気な赤ちゃんが産めるだろうか?」など、さまざまな不安がわいてくることがあります。

高齢出産を控えた方ほど、妊娠期に気をつける病気がいくつかあり、そのそれぞれについて簡単に説明していきます。

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出産に不安を感じるのは当たり前

妊娠をして喜びを感じたのもつかの間、妊娠期に「赤ちゃんに異常が見つかったら?」、「流産しないだろうか」、「元気な赤ちゃんが産めるだろうか」など、さまざまな不安がわいてくることがあります。

特に高齢出産についてネットや雑誌の特集などを読み、ますます不安が膨らんでしまった人もいるかもしれません。出産に関して、漠然とした不安を感じるのは当たり前です。全く何の心配もない人はいないはずです。

自分自身の経験から振り返ってみても、高齢出産であればあるほど、出産に対する不安は出産が終わった時にようやく消えるものだと思っています。周産期医療では、何が起こるか最後まで予測できません。

妊娠期のある地点までは順調に推移していても、次の段階で突然、帝王切開や輸血などの緊急治療が必要になることもあります。

緊急治療後は、母体が高年齢だから起こりやすいとか、20代だから何の心配もないとか、年齢だけでひとくくりにすることはできません。

高齢出産でなくても、妊婦さん一人一人の背景や合併症の有無は異なってきます。それらが複合して妊娠・出産に影響を与えています。

妊婦さんなら誰でも起こりうる病気や状態などで、特に高齢出産の方に気をつけることを中心にお話ししていきたいと思います。

高齢①

自分自身の病気や状態を把握して、妊娠期は常に気をつけることが大事です。

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妊娠期の前後に発症する病気の種類

高齢出産における妊娠・出産リスクを考える上でも、母体が高年齢であることだけでなく、それぞれの時期に発症したリスクが重なって、出産時に影響を与えることになります。

また産後の時期にも目を向ける必要があり、出産ではなく、産後に母子が元気で育児がスムーズに行えることが、周産期医療の目指す本来のゴールと考えています。

次に妊娠前、妊娠時、妊娠中、分娩時、産後の5つの段階に沿って発症しうる病気をあげてみました。

病名など
妊娠前 合併症(子宮筋腫、乳がん、内科疾患)、手術既往(帝王切開、流産手術、子宮筋腫核出術)、肥満
妊娠時 不妊治療、多胎妊娠、先天異常、染色体異常
妊娠中 早産、感染症、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、胎児・胎盤・羊水量の異常
分娩時 破水、微弱陣痛、胎児機能不全、帝王切開、吸引分娩、肩甲難産、出血、産道損傷
産後 育児不安、マタニティブルース、産後うつ、児童虐待



これだけさまざまな病気があり、高齢者の方であればあるほど、それぞれに対して簡単でも構わないので、気をつけることを理解しておいてほしいと願っています。

それぞれの病気の種類については、後ほどお話ししていきます。

高齢①

さまざまな病気があることを理解し、常日頃から気をつけることです。

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高齢出産に伴って起こりやすい合併症

高齢出産が初めての方は、下記のような要因があるため、合併症を起こしやすいと言われています。

  • 体外受精や顕微受精などの生殖補助医療を受けている人が多い。
  • 子宮筋腫を合併しやすい。
  • 子宮筋腫核出術の既往が多い。
  • 妊娠高血圧症候群になりやすい。
  • 前置胎盤(ぜんちたいばん)になりやすい。



合併症を起こしやすいということは、出産に時間がかかったり、帝王切開が多くなったりすることにも影響します。

しかし年齢以外の要因を取り除いても、高齢出産では帝王切開率が高くなり、また分娩に時間のかかる方も多くなります。

高齢出産であればあるほど、注意すべき点が多くなるのは事実です。しかし自分でケアできることもあります。是非、自分の健康状態について理解をしておきましょう。

次に妊娠に影響を与える病気について、その病名と気をつけることを順に説明していきます。

高齢①

自分の健康状態を把握しておくことは大切です。

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妊娠高血圧症候群

妊娠をすると子宮の中で赤ちゃんを育てるために、全身の循環血流量が増えていきます。

赤ちゃんは呼吸する事も、食事をすることも、排泄することもできません。お母さんの子宮から胎盤に流れてきた血液中の酸素や栄養を、へその緒から受け取り、不要となった物質は、へその緒からお母さんの血液循環に戻します。

「妊娠高血圧症候群」とは、お母さんの血圧が上がり、胎盤を通じた胎児への血液循環が阻害される妊娠合併症の1つです。放置すれば、母子に大きなストレスがかかってしまいます。

この病気の原因については、未だ解明されていませんが、お母さんから赤ちゃんに酸素や栄養補給する胎盤が上手く形成されていないことが理由で、母体の全身の血管に作用して病気を引き起こすのではないかと考えられています。

妊娠高血圧症候群は、妊娠20週に初めて高血圧が発生し、分娩後12週までに正常に戻る場合をいいます。最高血圧が140 mmHg以上、または最低血圧が90 mmHg以上の場合に診断されます。

最高血圧が160 mmHg以上、最低血圧が110 mmHg以上になると重症です。むくみを伴うこともありますが、むくみだけでは診断されません。

たんぱく尿を伴う場合には、「妊娠高血圧腎症」と診断され、腎臓にも負担がかかったさらに深刻な状態となります。

この病気は妊婦さんの20人に1人という高い確率で起こる病気です。特に下記の方は注意が必要です。

  • 高齢出産の方
  • 高血圧や糖尿病などの基礎疾患のある方
  • 高血圧の家族歴のある方
高齢①

高齢出産や過去に基礎疾患のある方は、特に気をつけることが必要です。

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重症化すると母子双方の命に関わる

血圧はあまり気にしなくていいのでは?と軽く考えてはいけません。妊娠高血圧症候群で妊娠32週以前に発症する「早発型」では特に重症化しやすいからです。

重症になるとお母さんは、下記の症状となります。

  • けいれん発作
  • 脳出血
  • 肝臓や腎臓の障害
  • 肝機能障害と溶血と血小板減少を起こすHELLP(ヘルプ)症候群
  • 肺水腫(肺の組織に水がしみ出し、呼吸障害となること。全身に酸素を送れなくなる状態)



以上を引き起こすことがあり、母体の命に関わり大変気をつける病気の1つです。

母体の状態が悪化すると、子宮内の環境も悪化します。さらに赤ちゃんにも深刻な影響が起きますので、この病気は非常に気をつけなければいけません。

母体の状態が悪化すると、下記の深刻な症状が発生しやすくなります。

  • 胎盤に十分な血液が行き届かなくなり、赤ちゃんの発育が悪くなる(胎児発育不全)
  • 分娩前に胎盤が子宮からはがれる(常位胎盤早期剥離)
  • 赤ちゃんに酸素が十分に届かず、ストレスがかかる(胎児機能不全)



以上の症状が起こりやすくなりますので、気をつけることです。まれに残念ながら赤ちゃんが子宮内で亡くなってしまう(子宮内胎児死亡)が起こることもあります。

高齢①

母体の状態が悪化すると、さらに深刻になりますので、日頃から血圧を測定し気をつけることです。

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治療法や対策は?

妊娠高血圧症候群は予防ができないので、早く病気の発症に気づくことが大切です。

発症したら安静が基本で、重症の場合は入院したり血圧を下げる薬を使用していきます。

しかし妊娠高血圧症候群は、胎盤の血液循環が悪くなったために、母体の血圧を上げて赤ちゃんに酸素を届けようとする反応であるため、急激に血圧を下げるとさらに赤ちゃんへの酸素の供給が妨げられるので、注意が必要です。

母体の血圧コントロールが難しい危険な状態と判断した場合は、すみやかに分娩誘発や帝王切開を行い、妊娠状態を終わりにします。妊娠を終了させることが、根本の治療となります。

赤ちゃんは分娩週数や出生体重によっては、新生児集中治療室での管理となります。高齢出産であるか否かに関わらず、妊娠週数によっては残念ながら妊娠継続を諦め、中絶が必要になることもあります。

出産して妊娠を終わらせると、母体は徐々に回復に向かっていきます。産後12週間経過しても、高血圧が持続する場合には、妊娠高血圧症候群ではなく、妊娠は関係ない「高血圧症」と診断され、内科での継続した管理が必要になります。

高齢①

この病気は予防ができないため、早めに気づくことが必要です。

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自分で気をつけること

妊娠高血圧症候群の危険なところは、腹痛や出血といったわかりやすい自覚症状が出ないことです。

自分で気をつけることとして、体調不良に早めに気づくために、毎日血圧を自宅で測り、記録することです。朝食や夕食の前など決められた時間に測定すればいいでしょう。

自宅での血圧測定で、最高血圧が130 mmHgを超えたら、要注意となります。血圧が高くなったら、なるべく時間を見つけて、休養を心がけてください。

また塩分を取りすぎない食事を心がけてください。カボチャなどの野菜類や、カルシウムを多く含むほうれん草、バナナ、りんご、みかんなどの果物のほか、海藻類や、キノコ類をしっかりとってください。

血圧は妊婦健診でも測定しますが、妊娠してしばらくの健診は4週間に1回しかありません。その間は不安に思われる方もおられるかもしれません。重症化の何よりの予防は、早期発見ですから、自分で気をつけることです。

特に高齢出産では、家庭用の血圧測定器を1台購入し、血圧測定を日課としてほしいと思います。急激に血圧が上昇した場合は、次の妊婦健診を待たずに早めに受診してください。

高齢①

体調不良に早めに気づくために、毎日血圧を測り、記録していきましょう。

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妊娠糖尿病

「妊娠糖尿病」とは妊娠により、糖代謝に異常をきたすこと=血糖値が高い状態になることを言います。

この病気は妊娠して初めて診断されたものだけを指します。妊娠前から診断された糖尿病は、妊娠糖尿病には当てはまりません。

いずれにしても母体だけでなく、赤ちゃんにも影響する病気なので、妊娠中にしっかりとスクリーニング検査を受けるようにしてください。

妊娠糖尿病のメカニズムは、次の通りになります。まず妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンの影響で、血糖値を下げるインスリンの働きが低下します。このような状態を「インスリン抵抗性」と言っています。

血糖値は上昇しやすくなります。正常ならば、膵臓(すいぞう)からのインスリンの分泌も増加し、血糖値は正常範囲に保たれるのですが、妊娠糖尿病では、インスリン抵抗性に打ち勝つだけのインスリン分泌がありません。

つまり母体が高血糖になり、赤ちゃんまで高血糖となってしまうのです。

お母さんが妊娠糖尿病や糖尿病になると、妊娠高血圧症候群になりやすくなるばかりでなく、羊水過多症(羊水が多くなり、切迫早産や分娩に長時間かかること)や、肩甲(けんこう)難産(赤ちゃんが大きくなりすぎて、分娩中に肩が骨盤に引っかかり、出産の進行が止まったり、赤ちゃんの具合が悪くなったりすること)などが起こりやすくなります。

さらに赤ちゃんが高血糖になると、下記の症状が起こりやすくなり、さまざまな心配事が増えていきます。

  • 赤ちゃんが巨大児になる。
  • 先天性疾患を伴う。
  • 流産の危険性が高まる。
  • 出生後に低血糖や電解質異常となる。



さらに、将来的には子供が成人した時に糖代謝の異常や、肥満となる可能性が大いにあります。

高齢①

妊娠により血糖値が高くなると、赤ちゃんにまで影響します。

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妊婦検診のスクリーニング検査で診断

妊娠糖尿病は、妊娠初期の随時血糖値測定検査と妊娠中期(24週から28週)の50グラムGTC法(50グラム糖負荷検査)と、2段階のスクリーニング検査で診断します。

スクリーニング検査とは、ある状態の人を、そうでない人達と可能な限りふるい分ける検査のことをいいます。

「随時血糖法」は、食事摂取の有無に関係なく行う血糖値測定検査です。 施設により若干異なりますが、100 mg/dl以上を陽性とします。

50グラムGTC法は、食事摂取の有無に関係なく、ぶどう糖50 gを引用して1時間後に行う血糖値測定検査で、140 mg/dlを陽性とします。

随時血糖法で100 mg/dl以上、又は50グラムGTC法で140 mg/dl以上の場合には、「75グラムOGTT法」を行います。これは空腹時血糖値を計った後で、ぶどう糖75 gを飲用し、1時間後、2時間後の血糖値を計る検査です。

そこで基準値をオーバーすると、妊娠糖尿病と診断されます。日赤医療センターでは、妊娠糖尿病の発症頻度は、20歳代後半で2~3%であるのに対し、40歳代では5%と増加しています。

高齢①

高齢出産になるほど、妊娠糖尿病の発症率は上がっています。

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自分で気をつけることと治療法

妊娠糖尿病と診断されると、まずは食事療法をしてください。血糖値の上昇を避けるために、食事を1日に4回~6回に分けて食べる「分食」を行えばいいでしょう。

下記のことを行ってください。

  • 食事の最初に野菜サラダを食べる。
  • よく噛んで時間をかけて食べる。
  • 夕食の量は控えめにする。



こういった食事の取り方は、血糖値を上げにくくする方法です。

切迫早産などの恐れがない場合は、積極的にウォーキングするなど、有酸素運動を行うのも効果的でしょう。

その他で自分で気をつけることといえば、血糖を自分で測定することです。自宅で指先にごく細い針を刺して、微量の血液を取り、血糖値をチェックする方法が有効です。

食前の血糖値が、100 mg/dl未満、食後2時間では120 mg/dl以下を目標にして下さい。

それでも食事療法や運動でもなかなか血糖値が下がらない場合は、インスリンを使用します。インスリンは、胎盤移行性がないので、赤ちゃんへの影響は心配することはありません。

妊娠が進むにつれてインスリンの使用量が増えますが、産後は母体から胎盤が出てしまうので、インスリン抵抗性もなくなり、インスリン注射を減らすこと、もしくは中止することができます。

将来のことで注意したいことは、妊娠糖尿病になった方は、ならなかった方に比べ、将来的に糖尿病になる確率が約7倍になるということです。そして赤ちゃんも将来、糖尿病や肥満を発症する可能性が非常に高くなります。

こういったことをできるだけ避けるために、自分で気をつけることとして、定期的な健康診断を続けると同時に、食生活や運動についても引き続き注意していくことが大事です。

また産後に母乳育児を行うと、お母さんも赤ちゃんも将来、糖尿病になる頻度が減少することがわかっています。ウォーキングなどで体を動かすことも、血糖値の上昇を抑えるのに有効です。

高齢出産であるか否かにかかわらず、将来も母子とともに健康でいられるようにしたいものです。

高齢①

まずは食事療法や血糖値測定で、自分で気をつけられることから始めましょう。

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子宮筋腫

「子宮筋腫」とは子宮にできる筋肉のこぶのような良性の腫瘍です。

高齢出産の方ほど、子宮筋腫の発症率が高まります。最近は超音波検査が普及したことによって、以前は診断できなかった子宮内側にできるような小さい子宮筋腫も妊娠前に、発見される方が増えてきています。

さらに妊娠前に子宮筋腫を手術で切除してから、妊娠する方も増えてきています。子宮筋腫は大きさやできる場所により、症状が異なってきます。

子宮筋腫が小さい頃は、妊婦さんでも自覚症状があまり感じられない方が多いようですが、小さくても子宮内側にある粘膜下筋腫は過多月経の原因ともなりますし、鉄欠乏性貧血を引き起こします。

そして子宮筋腫が大きくなっていくと、下記の症状が現れます。

  • 過多月経
  • 月経痛
  • 膀胱(ぼうこう)が圧迫されて尿が近くなる
  • 直腸を圧迫して便秘になる
  • 下腹が膨らんでくる



一方で、子宮の外側にできる「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」は、自覚症状がほとんど現れません。

中には赤ちゃんの頭ぐらいの大きさで、初めて産婦人科で受診するという方もおられます。また妊娠して産婦人科を受診したことで初めて、子宮筋腫があることを知るという人もいます。

病気の中でも子宮筋腫は最初は自覚症状がないことがほとんどですので、子宮筋腫という病気を理解することで、自分自身で気をつけることが大切です。

高齢①

子宮筋腫は、超音波検査を受診し、早期発見が大切です。

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子宮筋腫の正確な情報を確認してみる

子宮筋腫があって妊娠した場合のリスクは、下記のことが考えられます。

  • 切迫流産
  • 切迫早産
  • 逆子などの赤ちゃんの位置の異常
  • 前置胎盤
  • 常位胎盤早期剥離



また出産の際には、下記の現象が現れることがあります。

  • 陣痛が弱くなる
  • 出血量が増える
  • 帝王切開分娩が増える
  • 産後の悪露(おろ)の排泄が悪くなり、子宮内感染を起こす



ただし、子宮筋腫の直径が、5センチを越えなければ、その影響は比較的問題がないと言われています。

子宮筋腫のある場所が、一時的に痛むことがあります。抗菌薬の投与を行い、1週から2週で元に戻ることが多いようです。その原因としては、妊娠中の子宮筋腫の変性に伴う痛みと考えられています。

妊娠中は分泌が盛んになるエストロゲン(卵胞ホルモン)の働きによって、子宮筋腫が大きくなったり、また子宮が急に増大することで、子宮筋腫が変性したりすることがあります。

しかし妊娠中や帝王切開分娩の時に、子宮筋腫の核出術を行うことについては、十分な検証ができていません。なので、一般的には行わないことが多いようです。

なぜなら、妊娠していない時の手術と比較して、妊娠中の子宮は血流が豊富になるので、手術に伴う出血量が多くなり、より難易度の高い手術となるからです。

高齢出産を控えている方ほど、経験の豊富な施設で自己血などをあらかじめ準備して、手術を受けることが大切です。それは子宮筋腫の存在が、妊娠継続の障害となったり、急激に増大したりするような場合があるからです。

このように自分で気をつけることを把握できていれば、その後の妊娠・出産の経過が順調に進むこともあります。

過去に子宮筋腫の施術経験がある場合には、どの位置にどれほどの大きさの筋腫が、いくつあるのか、いくつ核出したのか、という内容を確認しておくと良いでしょう。

手術を受けた病院と出産を予定する病院が異なる場合は、出産に備えてあらかじめ紹介状を書いてもらうことができます。自分で気をつけることとして、正確な情報があると、妊娠・出産の経過を見ていくときに大いに役立ちます。

高齢①

自分の子宮筋腫の情報(大きさ、位置、数)を正確に把握することが大事です。

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出産時の出血に備えること

子宮筋腫を合併している場合は、帝王切開分娩を選択した場合でも出血量が多くなります。赤ちゃんと胎盤を取り出した後に、子宮の収縮が不十分なことが多く、結果として出血量が多くなるからです。

このほかに、前置胎盤や、子宮収縮不全、弛緩(しかん)出血などの場合にも、出血量が多くなります。

そんなときに必要になるのが、お母さんの「予備力」です。血液中のヘモグロビン濃度が基準値以上ある状態が理想的です。

仮に同じ1,000 mlの出血量であっても、予備力があるかどうかで、分娩後の回復には大きな違いが出てきます。また輸血が必要かどうかギリギリの状態の時は、予備力があるほうが、結果として輸血を回避できることになります。

出血量が多くなることが想定される場合に自分自身が気をつけることといえば、この予備力を高めるため鉄分の摂取を心がけることです。

日常の食事では、下記のようなものを積極的にとると良いでしょう。

  • レバー
  • あさり
  • ひじきなどの海藻類
  • 緑黄色野菜
  • 豆腐・納豆などの大豆食品
  • その他、鉄分が多く含まれる食材



またビタミンCを一緒に摂取すると、鉄分の吸収を高めてくれます。妊娠検診で行う血液検査で、貧血を指摘され、鉄分を処方された場合には、きちんと内服してください。

なお子宮筋腫と似た病気に「子宮腺筋症」があります。

これは本来、子宮の内側を覆っている子宮内膜が、本来の場所以外に生育することにより起こる子宮内膜症の内、内膜の生育が子宮筋層に起こるものです。女性ホルモンの影響で、子宮の筋肉の壁が厚くなる疾患です。

子宮筋腫と同じように、過多月経、月経困難症などの症状が起こる病気です。子宮筋腫のように、こぶのような輪郭を持たないため、一般に病巣をだけを切除することが難しいです。妊娠中の注意事項は子宮筋腫とほぼ同じとなっています。

高齢①

日頃から鉄分の接種を心がけ、出血したときの予備力を高めておきましょう。

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子宮頸(けい)がん

産婦人科を妊娠して初めて受診するという女性も多くなってきました。その時に、初めて子宮や卵巣などの病気が見つかる方もおられます。

妊娠中は子宮内の赤ちゃんの影響を考え、検査にも制約があります。もし、がん(悪性腫瘍)が疑われたとしたら、それはお母さんの生命にも関わる問題です。がんの種類によっては、最近では妊娠を継続しながら治療することもあります。

しかしお母さんと赤ちゃんの両方の副作用を慎重に監視することが求められます。またがんが進行してしまっている場合には、結果的に赤ちゃんを諦めなければならないことも考えられます。

早期発見で病気の進行を防げる病気が、子宮頸(けい)がんです。

この病気は、20代から40代の方がほとんどです。この病気は妊娠初期に子宮頸部をブラシなどでこすって行う細胞診検査によって発見する事ができます。初診の時に、この検査を受けていなければ、次回の妊婦健診で受けるようにしてください。

もし細胞診で異常が見つかった場合は、拡大鏡で子宮頸部を観察した上で、組織を数カ所切り取って検査する組織診を行っていきます。

組織診の結果、がんだと分かっても、がんが0期(頸部の上皮内にとどまっている)で浸潤の恐れがなければ、妊娠を継続しながら経過観察行っていきます。

わずかに浸潤していると疑われる場合でも、「子宮頸部円錐切除術」といって、頸部の1部を切り取る手術を行うことで、妊娠の継続は可能となってきます。

ただし手術によって、産道の1部である頸管を切り取るので、切迫早産が起こりやすくなります。その予防の為、「子宮頸管縫縮術」という子宮頸管を輪状に締める手術を行うこともあります。

いずれにしても自分で気をつけることと言えば、子宮頸がんを早期に発見するために検診を受けることです。治療によって再発を防ぐことができますし、妊娠を継続することが可能です。妊娠中に経過観察となった方は、産後も定期的な検査が必要となってきます。

高齢①

子宮頸がんを発見する細胞診検査は、妊婦健診で必ず受けるようにしてください。

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多胎妊娠

多胎妊娠とは、双子以上の妊娠のことをいいます。

特に生殖補助医療では、妊娠率を高めるために、子宮に複数個の胚(はい)を戻すことがあります。またタイミング法や人工授精で使われる排卵誘発剤も多胎の可能性を高めます。

多胎妊娠では、下記のことが起こりやすくなります。

  • 切迫流産
  • 切迫早産
  • 早産
  • 帝王切開分娩
  • 出産時の出血過多

また長期入院が必要となる場合もありますし、赤ちゃんが低体重の場合も多く発生します。

このような多胎妊娠に伴う問題点から、2008年に日本産科婦人科学会は、「生殖補助医療において、子宮に戻す胚(はい)の数は、原則として1個としました。ただし35歳以上の女性や2回以上の治療で不成功だった場合は、2個まで認める」との見解を出しました。

その結果、1990年から増加し続けていた多胎妊娠は、2008年以降減少するようになりました。特に品胎(ひんたい)=三つ子妊娠は、非常に少なくなりました。

高齢①

多胎妊娠は、長期入院が必要な場合や赤ちゃんが低体重の場合も発生します。

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前置胎盤

通常の胎盤は、子宮の底部といって子宮口から最も離れた位置の近くにつきます。

しかし、その位置が正常より子宮口に近い位置につき、胎盤が子宮口にかかっていたり、覆っていたりする状態を「前置胎盤」といいます。

さらに前置胎盤のうち、胎盤と子宮が癒着(ゆちゃく)して、胎盤がはがれない状態を「前置癒着胎盤」といいます。前置胎盤の原因はよくわかっていませんが、この病気は高齢出産の妊娠では確率が非常に高くなります。

子宮口の上に胎盤があるため、胎盤がはがれる前に赤ちゃんが先に出て来られず、経膣分娩を行うことができません。帝王切開分娩が必要となります。また切迫早産になりやすいため、出産前に管理入院を行います。

帝王切開術の際には、胎盤剥離面からの出血を止めることが難しく、普通の帝王切開術より出血量が多くなります。

そのため気をつけることは、あらかじめ自己血貯血や輸血の準備などを行います。それでも難易度の高い帝王切開術となります。

自分で気をつけることといえば、日頃から鉄分の多い食事をしっかり取り、貧血があれば鉄剤の内服など行って出産に備えることです。

出血が止まらない場合や、事前に前置癒着胎盤を診断された場合には、子宮全摘術を行わざるを得ない場合もあります。これは母体を救うためにやむを得ない処置となります。

高齢①

帝王切開で出血量が多くなった場合に備えて、日頃から鉄分の多い食事を心がけましょう。