高齢出産では不妊治療により多胎妊娠が増え、子宮筋腫や子宮腺筋症を合併する割合が高くなるため、切迫早産に対する注意が必要になってきます。
それでは、その「切迫早産」とは何でしょうか?
また切迫早産にならないために、気をつけることは何でしょうか?簡単に説明していきます。
切迫早産とは
妊娠37週から妊娠41週6日までの期間に出産することを「正期産」といいます。
赤ちゃんは十分に成熟しているため、お母さんのへその緒を通じて、酸素や栄養を受け取っていた子宮内の環境から、子宮の外に出ても母親から独立して生きていくことができるようになります。
一方で、妊娠22週から妊娠36週6日までに出産となった場合には、早産といいます。そして早産が差し迫った状態を、「切迫早産」といいます。
早産や切迫早産は、多胎妊娠、子宮筋腫、子宮腺筋症を合併した場合に頻度が上がります。
また子宮頸(けい)がんの治療として、子宮頸部円錐切除術を受けた人は、子宮頸管の長さが短く、膣からの雑菌の侵入などによる局所の感染を防ぐ働きのある、頸管粘液の分泌が低下することにより、早産や切迫早産の頻度がより高くなります。
特に高齢出産では、不妊治療により多胎妊娠が増えています。あわせて、子宮筋腫、子宮腺筋症を合併する割合も高くなりますので、切迫早産に対する注意が必要です。
またこれらの要因や合併症がなく、高齢出産というだけの場合でも、早産や切迫早産が起こりやすくなります。
早産でも妊娠週数により、出生時体重や赤ちゃんの呼吸、循環状態にはかなりの幅があります。赤ちゃんの呼吸状態が不安定で、自分で呼吸をすることが出来なければ、人工呼吸器の管理が必要になってきます。
そのため破水や感染などの問題がなければ、ある程度の妊娠期間を継続できるように、安静入院をしてもらい、子宮収縮を抑える薬などを投与していきます。
高齢出産ほど、切迫早産の確率が上がっていきます。
切迫早産で気をつけること
長期の入院になると、限られたタイミングでしかシャワーを浴びることができません。そのため、お母さんの心身にさまざまななストレスが生じる方もおられます。長年不妊治療に取り組み、今回の妊娠をラストチャンスだと考えてる人もいるでしょう。
しかし、切迫早産と診断されたら、気をつけることとして、安静が大切になってきます。お母さんの落ち着いた気持ちは、お腹の赤ちゃんにも伝わっていきます。長く続く子育てのためにも、のんびりと休みを取ってください。
その他に気をつけることとして、入院中に気持ちが落ち着くように自分の好きな音楽を聴いたり、植物を眺めたり、アロマを楽しんだり、写真集を見るなどしてリラックスしてください。
病室の方とお話をすることで気持ちが楽になる人もいます。パソコンやスマートフォンは目や心が疲れてしまいますので、あまり使いすぎることのないように気をつけてください。
またベットの上で足首を曲げたり伸ばしたりして、ふくらはぎの筋肉を動かしたり、5本指のソックスで足の指を開いたり閉じたりすると、血流が良くなり、むくみや下肢の血栓の予防につながります。
切迫早産と診断されたら、とにかく安静にして気持ちを落ち着かせましょう。
罪悪感を持たないこと
切迫早産は高齢出産の方ほど多いですが、その場合に自分がイメージした赤ちゃんとは全く別の小さい赤ちゃんと対面して、ショックを受けるお母さんがおられます。
赤ちゃんは、ゆっくりでも少しずつ成長していくものです。早産となってしまったときに、自分が無理をしてしまったからと自分を責めてしまうようなことがあるかもしれません。
しかし、妊娠・出産の経過や合併症の有無については、自分の意志でどうすることもできないのが現実です。
日赤医療センターでは、少しでもお母さんから出産前に赤ちゃんの姿をイメージできるように、週数ごとに体重や大きさを合わせた赤ちゃんの人形を用意しています。
「妊娠何週だとこのぐらいの重さ」と人形を抱っこして実感してもらえるような取り組みが行われています。
高齢出産の方ほど多いですが、切迫早産は自分の意志でどうすることもできないため、様々なタイミングで起こり得ます。思い通りにいくことばかりではありませんが、命を授かったことへの感謝の気持ちを忘れずにしっかりと前を向いていってください。
切迫早産となった場合でも罪悪感を持たず、命を授かった感謝の気持ちを忘れないことです。